フリーランス美容師の開業届|9項目の書き方・開業日の決め方・出さないとどうなるか

2022.04.12

「開業届ってどう書けばいいの?」——役所の書類は専門用語が多く、初めてだと迷いますよね。この記事では、フリーランス美容師になる方に向けて、開業届の書き方(9項目の記入ガイド)、開業日をいつにするか出さないとどうなるかまで、実務に沿って解説します。

結論:9項目を記入し、開業後1ヶ月以内に税務署へ

開業届の書き方はとてもシンプルです。要点は次の3つだけ。

  • 用紙は国税庁サイトからダウンロードするか、税務署の窓口でもらう(無料)。
  • 記入する項目は9つ。マイナンバー・住所・開業日がわかるものを手元に用意すれば迷わず書けます。
  • 提出先は管轄の税務署。提出期限は開業後1ヶ月以内(遅れても罰則はありません)。

青色申告で節税したい場合は、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」も出すのがポイントです。この申請の期限は開業日から2ヶ月以内なので、開業日の決め方(後述)とセットで考えてください。

そもそも開業届とは?

開業届とは、正式には「個人事業の開業・廃業等届出書」と呼ばれ、個人で事業を始めたことを税務署へ知らせる書類です。フリーランス美容師は個人事業主にあたるため、事業を始めたら提出するのが原則です。

業務委託サロンで働く場合も、面貸し・シェアサロンで働く場合も、継続的に事業として収入を得るなら対象になります。雇用契約ではないため、勤務先が代わりに手続きをしてくれることはありません。

開業届を出さないとどうなる?

結論から言うと、提出しなくても罰則はありません。ただし「出さなければ申告しなくてよい」わけではありません。ここを取り違えると、あとで追徴課税につながります。

よくある誤解 実際は
出さないと罰則がある 一般に、提出しなくても罰則の定めはないとされています
出していないから確定申告も不要 誤り。開業届の提出とは関係なく、所得があれば確定申告が必要です
あとから出せばいいので急がなくてよい 青色申告の承認申請には期限があるため、遅れるほど節税の機会を失います

つまり、出さないことの実害は「罰せられること」ではなく「青色申告の特別控除を使えないまま、申告義務だけ残ること」です。加えて、屋号名義の口座開設や、契約・融資の場面で個人事業主であることを示す書類がない状態になります。

迷ったら出しておくのが無難です。費用はかからず、屋号は空欄でも提出でき、あとから変更もできます。

開業届を出す3つのメリット

  1. 青色申告ができる:特別控除を受けられ、税負担を抑えられます。控除額は帳簿と申告方法で変わり、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存なら最大65万円、紙提出は55万円、簡易な記帳は10万円です(2026年8月時点)。
  2. 補助金・助成金の申請ができる:開業した個人事業主が使える制度の対象になります。
  3. 個人事業主の証明になる:屋号名義の銀行口座を開設できたり、契約・融資で信用を得やすくなります。

開業届を出す3つのデメリット(注意点)

  1. 失業手当が受けられなくなる:開業届を出すと「失業状態」ではなくなるためです。
  2. 帳簿付けが必要になる:青色申告(65万円・55万円控除)には複式簿記が必要ですが、会計ソフトを使えば負担は大きく減ります。
  3. 扶養から外れる可能性:収入によっては扶養の条件を超えることがあります。

実際、当社GO TODAY SHAiRE SALONがアイリストのクルー(利用者)を対象に行った社内アンケートでも、独立初期につまずきやすいこととして「確定申告・経費管理などのお金まわり」を挙げる声が多くあります(当社調べ)。当社のシェアサロンを利用しているフリーランス美容師のHARUNAさんも「確定申告、体調管理、ブランディングをしっかりしていくことが大事」と語っています(GO TODAY SHAiRE SALON公式インタビューより)。開業届と青色申告の申請は、このお金まわりを整える最初の一歩です。

職業欄は「美容師」だけではない(当社の独自調査)

開業届でつまずきやすいのが職業欄と事業の概要です。当社の利用者の3人に1人は、美容師以外の職種だからです。当社の独自調査では、職種構成は次のとおりでした。

職種 構成比 開業届の職業欄の書き方(例)
美容師(ヘア) 約66% 美容業
ネイリスト 約21% ネイル業
アイリスト 約12% 美容業(まつげエクステンション)
アイブロウリスト 約1% 美容業(アイブロウ)

※GO TODAY SHAiRE SALONの独自調査。構成比は四捨五入。ごく少数の「その他」は掲載していません。

職業欄は、実際に行う施術が伝わる書き方にしておくと、申告内容と実態のずれを防げます。複数の施術を行うなら併記して構いません。なおネイリストは美容師免許がなくても働けますが、開業届の提出は職種に関係なく必要です(免許の要否と開業届の要否は別の話です)。

開業届の書き方|9項目の記入ガイド

記入前に、マイナンバー・事業所(自宅)の住所・開業日がわかる書類を準備しましょう。各項目の書き方と、シェアサロン勤務時の記入例は次の表のとおりです。

項目 書き方 シェアサロン勤務時の記入例
1. 税務署名・提出日 納税地を管轄する税務署名と、提出する日付を記入 自宅住所地の管轄税務署(国税庁サイトで検索できます)
2. 納税地・住所 自宅を納税地にするのが一般的。住所と電話番号を記入 シェアサロンの店舗住所ではなく、自宅の住所を書くのが一般的
3. 氏名・生年月日・個人番号 氏名・生年月日・マイナンバーを記入。押印は不要 マイナンバーカードの記載どおりに記入
4. 職業・屋号 職業は「美容業」など。屋号は任意で空欄でも可 職業「美容業」/屋号は空欄、または自分のブランド名
5. 届出の区分・所得の種類 新規開業なら「開業」、所得は「事業所得」に印 同じく「開業」「事業所得」に印
6. 事務所等を新設した日 開業日を記入(決め方は次章) シェアサロンの利用開始日など、事業を始めた日
7. 開業に伴う届出書の提出の有無 「青色申告承認申請書」などを一緒に出すかを選択 青色申告をするなら「有」に印を付けて同時に提出
8. 事業の概要 事業内容を具体的に記入 「シェアサロンの設備を利用した美容師によるカット・カラー・パーマ等の施術」
9. 給与等の支払の状況 スタッフを雇う場合のみ記入 一人で働くなら空欄で問題なし

「職業・屋号」の記載例

一般的には、職業欄は「美容業」または「美容師」と記入すれば問題ありません。屋号は任意で、空欄のまま提出でき、後からいつでも登録・変更できます。

シェアサロンで働く場合も考え方は同じです。屋号は「働く店舗の名前」ではなく「自分の事業の名前」なので、勤務先のサロン名を書く必要はありません。記入例としては、職業「美容業」、屋号は空欄のまま、またはSNSや予約サイトで使っている自分のブランド名を登録する形になります。

「事業の概要」の記載例

一般的には「美容師によるカット・カラー・パーマ等の施術」のように、誰が何をするのかが伝わる書き方をします。

シェアサロンで働く場合の記入例は「美容所登録済みのシェアサロンの設備を利用し、顧客へカット・カラー・パーマ等の美容サービスを提供」など。ネイルやまつげエクステも行う場合は、その施術内容も併記しておくと実態と申告内容が一致しやすくなります。書き方に迷ったら、提出時に税務署の窓口で相談すれば教えてもらえます。

また、当社の店舗ではシャンプーやトリートメントなどの店販(物販)も行えます。店販の売上に利用料はかからない仕組みです(2026年8月時点)。物販も予定しているなら、事業の概要に「美容関連商品の販売」を併記しておくと安心です。判断に迷う場合は、税理士や税務署に確認しましょう。

開業日はいつにする?美容師の3パターン

9項目のうち、いちばん迷うのが「事務所等を新設した日」=開業日です。開業日に厳密なルールはなく自分で決められますが、実態に合った日にするのが原則です。美容師の独立でよくある3パターンを整理します。

状況 開業日の目安 注意点
サロンを退職してシェアサロン・面貸しを始める 店舗の利用を開始した日(初回に入客した日) 退職日ではなく、自分の事業として売上が立ち始めた日で考える
業務委託サロンで働き始める 業務委託契約にもとづいて働き始めた日 契約書の開始日と実際の稼働開始日がずれることがある。実態に合うほうを選ぶ
副業から専業に切り替える 副業として継続的に収入を得始めた日 専業になった日ではない。副業の時点ですでに事業なら、そこが開業日になり得る

決めるときに効いてくるのが青色申告承認申請書の期限です。一般に、申請期限は開業日から2ヶ月以内(1月1日〜1月15日に開業した場合はその年の3月15日まで)とされています。開業日を後ろにずらすと申請期限も後ろに動きますが、前にずらすと期限切れになることがあるので、青色申告をするなら開業日と申請日をセットで確認してください。

もう一点、開業日は何度も変えないこと。帳簿の期首や経費の計上時期と整合しなくなり、確定申告のときに説明がつかなくなります。最初に実態へ沿った日を決め、その日を基準に手続きを進めるのが安全です。判断に迷う具体的なケースは、税務署の窓口か税理士に確認しましょう。

入手〜提出までの3ステップ

  1. 入手する:国税庁サイトからPDFをダウンロード、または税務署の窓口で受け取る。
  2. 記入する:上の9項目を、準備した書類を見ながら記入する。
  3. 提出する:管轄の税務署へ、窓口・郵送・e-Taxのいずれかで提出する(窓口は土日祝が閉庁のため平日に)。

e-Taxで提出する場合は、マイナンバーカードと、マイナンバーカード読み取りに対応したスマートフォン(またはICカードリーダー)を用意しましょう。自宅から24時間提出でき、受信通知が「提出した証拠」として残るため、平日に税務署へ行く時間が取りにくい美容師の働き方とも相性のよい方法です。

開業届とあわせて必要な手続き4つ

開業届のほかにも、フリーランスへの切り替え時には次の手続きが必要です。全体像はフリーランス美容師がやるべき5つの手続きでも詳しく解説しています。

  1. 国民健康保険への加入:市区町村の役所で手続き(身分証・マイナンバーを持参)。保険料の考え方はフリーランス美容師が保険料を安くするヒントをご覧ください。
  2. 国民年金への切り替え:会社員からフリーランスになる際に役所で手続き。
  3. 確定申告:1年間の所得を計算して申告。事業所得があるのに未申告だと罰則があります。いつ・何を・どこへ出すかは確定申告・税金の年間スケジュールにまとめています。
  4. 保健所への届出:自分で美容室を開設する場合は、保健所への美容所開設届と確認が必要です(開業予定日の3週間前までに事前相談を)。一方、シェアサロンを利用する場合は扱いが変わります。当社GO TODAY SHAiRE SALONでは美容所登録を施設側が済ませているため、利用者が自分で開設届を出す必要はありません。代わりに「従事者」としての登録が必要で、美容師免許証と、結核・伝染性皮膚疾患の有無が明記された医師の健康診断書(有効期間は自治体により1〜3か月以内など差があります)を提出します。ネイリストとして利用する場合、美容師免許は不要です。

提出前チェックリスト(持ち物・控え・青色申請)

開業届は押印が不要になっています。税務署へ行く前に、次のリストで最終確認をしましょう。

  • 開業届(提出用・控えの2枚):マイナンバー・開業日・職業欄に記入漏れがないか
  • マイナンバーカード(ない場合は通知カード+運転免許証などの本人確認書類、またはマイナンバー記載の住民票)
  • 青色申告承認申請書(青色申告をする場合のみ/提出用・控えの2枚):提出期限は原則として開業日から2ヶ月以内です
  • 郵送の場合:控えの返送用に、切手を貼った返信用封筒を同封する
  • 控えの保管場所を決めておく:屋号名義の銀行口座やクレジットカードの作成時に必要になることがあります

なお、2025年1月以降、税務署では窓口・郵送とも書類の控えへの収受日付印(受付印)の押なつが廃止されています(2026年8月時点)。提出した記録を確実に残したい場合は、e-Taxで提出して受信通知を保存するのが確実です。紙で提出する際の証明手段や不明点は、管轄の税務署や税理士に確認しましょう。屋号は後からいつでも変更できます。

よくある質問

開業届を出さないとどうなりますか?

一般に、提出しなくても罰則の定めはないとされています。ただし開業届を出していなくても、所得があれば確定申告は必要です。「出していないから申告しなくてよい」は誤りで、実害は青色申告の特別控除を使えないまま申告義務だけが残ることです。費用はかからないので、迷ったら出しておくのが無難です。

開業届の提出期限に遅れたらどうなりますか?

開業後1ヶ月以内が原則ですが、遅れて提出しても罰則はありません。ただし青色申告承認申請書には別に期限(原則として開業日から2ヶ月以内)があるため、節税を考えるなら早めに提出しましょう。

開業日はいつにすればいいですか?

厳密なルールはなく自分で決められますが、実態に合った日にするのが原則です。シェアサロンや面貸しなら店舗の利用を開始した日、業務委託なら働き始めた日、副業からの切り替えなら副業として継続的に収入を得始めた日が目安になります。青色申告の申請期限が開業日から起算されるため、開業日と申請日はセットで確認してください。

開業届の費用はかかりますか?

かかりません。用紙は国税庁サイトから無料でダウンロードでき、提出も無料です。

青色申告をするには何が必要ですか?

開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出します。特別控除は、e-Taxによる電子申告または電子帳簿保存で最大65万円、紙提出は55万円、簡易な記帳は10万円です(2026年8月時点)。申請書の提出期限は原則として開業日から2ヶ月以内のため、開業届と同時に出すのがスムーズです。

屋号は必ず決めないといけませんか?

いいえ。屋号は任意で、空欄で提出できます。後からいつでも登録・変更が可能です。

ネイリストやアイリストも開業届は必要ですか?

必要です。開業届は職種を問わず、継続的に事業として収入を得る人が対象になります。美容師免許の要否とは別の話で、ネイリストは美容師免許がなくても働けますが開業届は必要です。職業欄はネイリストなら「ネイル業」、アイリストなら「美容業(まつげエクステンション)」のように、実際の施術が伝わる書き方にします。

シェアサロンで働く場合も保健所への届出は必要ですか?

自分で美容所(店舗)を開設するわけではないため、開設届は不要です。当社GO TODAY SHAiRE SALONの場合、美容所登録は施設側が済ませており、利用者は従事者としての登録(美容師免許証・医師の健康診断書の提出)を行います。

まとめ

フリーランス美容師として開業するなら、開業届の提出は最初の一歩です。押さえるのは3点だけ——①9項目を実態どおりに埋める ②開業日は実態に合った日にして何度も変えない ③青色申告承認申請書を開業日から2ヶ月以内に出す。出さなくても罰則はありませんが、申告義務は残るうえ節税の機会を失うので、迷ったら出しておくのが無難です。

独立までの全体の流れはフリーランス美容師になるには?独立・開業までの流れと準備を5ステップで解説、収入の見通しやお金の管理はフリーランス美容師の収入の仕組み、節税は経費にできるもの一覧もあわせてご覧ください。働く場所を探すなら全国の店舗一覧から近くのシェアサロンを確認できます。

※本記事の税務に関する記載は2026年8月時点の一般的な取り扱いです。個別の判断は管轄の税務署または税理士にご確認ください。

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