美容師のダブルワークはできる?勤めながらシェアサロンで始める方法と税金・保険の注意点

2026.07.31

「サロンを辞める前に、まず副業として試してみたい」——独立を考え始めた美容師・ネイリスト・アイリストから最も多く出てくる発想がこれです。実際、ダブルワーク(掛け持ち)は法律で禁止されていません。ただし、勤務先の就業規則・税金・社会保険の3点を知らずに始めると、あとから申告漏れや職場トラブルになります。この記事では、勤めながらシェアサロンなどで働き始める具体的な手順と、職種別に必要な免許・届出、税金と社会保険の扱いまでを整理します。

結論:美容師のダブルワークはできる。押さえるのは「就業規則・税金・社会保険」の3点

ダブルワークは法律で禁止されておらず、勤務時間外の時間をどう使うかは基本的に働く人の自由です。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」(2018年策定・2020年9月改定)も副業・兼業を促進する立場で、同省のモデル就業規則は「労働者は、勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と定めています。裁判例でも、勤務時間外の時間の使い方を会社が制限できるのは限定的とされています。

したがって、実務で確認すべきなのは次の3点だけです。

  1. 勤務先の就業規則(禁止規定ではなく「許可制・届出制」になっているケースが多い)
  2. 税金(副業の所得が年20万円を超えたら確定申告。20万円以下でも住民税の申告は必要)
  3. 社会保険・雇用保険(「雇用+雇用」か「雇用+業務委託」かで扱いが変わる)

そして美容の仕事に固有の論点として、施術する場所が美容所として届出済みかどうかがあります。ここが自宅サロンとシェアサロンの決定的な差になります(後述)。

独立を考える人の多くは、まだサロンに勤めている

「辞めてから独立を考える」より「勤めながら準備する」ほうが実は多数派です。GO TODAY SHAiRE SALONの独自調査では、独立を検討し始めた段階で現在の働き方を回答した人のうち、最も多いのが「正社員としてサロンに勤務している」人で、およそ半数を占めます(当社調べ)。次に多いのが業務委託サロンで働く人で、すでにフリーランスとして独立済みの人は少数です。

つまり、多くの人は「収入がゼロになる不安を抱えたまま辞める」のではなく、給与という土台を残したまま次の働き方を検証しています。ダブルワークは、独立を一発勝負にしないための現実的な移行手段です。

「雇用+雇用」と「雇用+業務委託」でルールが変わる

同じダブルワークでも、2つ目の仕事が「雇われる形」か「自分の事業として請ける形」かで、労働時間・社会保険・雇用保険の扱いが変わります。シェアサロンや面貸しは、サロンに雇われるのではなく自分の事業として場所を借りて施術する形なので、下表の右側にあたります。

項目 雇用+雇用(別のサロンでアルバイト等) 雇用+業務委託・個人事業(シェアサロン・面貸し等)
労働時間の通算 通算される(1日8時間・週40時間の規制は合算で判断) 通算されない(労働時間規制の対象外)
社会保険 両方で加入要件を満たすと「二以上事業所勤務届」が必要 追加加入はなし。勤務先の社会保険のみ
雇用保険 原則、主たる賃金を受ける1つの事業所のみ 対象外(自分の事業なので)
所得の種類 給与所得(源泉徴収される) 事業所得または雑所得(自分で申告)
働く時間の裁量 シフトに拘束される 自分の予約に合わせて決められる

注意点:「業務委託」という言葉が使われていても、実態としてシフトや指示に拘束されていれば労働者と判断される場合があります。契約書の名称ではなく実態で判断されるため、契約内容は事前に必ず読み合わせてください。契約書の確認ポイントは美容師の業務委託契約書のチェックポイントで解説しています。

職種別:勤めながら施術するために必要な免許・届出

免許と美容所の届出は職種でまったく違います。ここを一括りにすると違法営業のリスクがあります。2026年7月時点の制度は次のとおりです。

職種 美容師免許 美容所の届出 追加の設備要件
ネイリスト 不要(美容師法の対象外) 不要 なし
アイリスト(まつ毛エクステ・まつ毛パーマ) 必要 必要(美容所で施術) なし
美容師(ヘア) 必要 必要 給排水設備等

まつ毛エクステは美容師免許が必要な美容行為であり、美容所として届出された施設で行う必要があります(厚生労働省2008年の通知による整理)。眉のスタイリングは施術内容によって判断が分かれ、医療行為にあたる施術はできません。

ここがシェアサロンを選ぶ実務上の理由になります。シェアサロンや面貸しの店舗は施設側が美容所の届出を済ませているため、利用する側が自分で保健所に開設届を出す必要がありません。自宅やマンションで独立する場合は、ヘアとアイは自分で美容所の要件を満たして届出する必要があり、ハードルが大きく上がります。職種別の場所選びはネイル・アイラッシュのシェアサロンの選び方、初期費用の比較は小さく独立する方法の比較を参照してください。

勤めながら始める5ステップ

  1. 就業規則を確認する。「副業禁止」ではなく「事前の許可・届出が必要」と書かれているのが一般的です。競業避止や顧客の引き抜きに関する条項も併せて読みます。就業規則が見つからない場合は労務担当に確認します。
  2. 働く場所を決める。ダブルワークは稼働が少ないところから始まるため、月額の下限が低い、または稼働に応じた料金体系の店舗が向いています。料金体系の仕組みはシェアサロンの料金相場で整理しています。
  3. 開業届を出し、青色申告を検討する。事業として継続的に行うなら開業届を提出します。青色申告特別控除は10万円・55万円・65万円の3段階で、65万円はe-Taxによる電子申告または電子帳簿保存が条件です。青色申告承認申請書には期限があるため、早めに手続きします。なお開業届・確定申告書に押印は不要です。
  4. 売上と経費を分けて記録する。本業の給与と副業の売上・経費が混ざると申告時に切り分けられません。副業用の口座・カードを分け、会計ソフトで最初から記帳します(会計ソフトの選び方)。
  5. 確定申告の準備をする。年間の流れは確定申告・税金の年間スケジュール、具体的な手順は確定申告のやり方にまとめています。

税金:確定申告と住民税の「20万円ルール」

給与をもらっている人は、給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。20万円以下でも住民税の申告は必要です。ここを「20万円以下なら何もしなくていい」と誤解する人が非常に多い部分です。

状況 所得税の確定申告 住民税の申告
副業の所得が年20万円超 必要 確定申告で完結(別途不要)
副業の所得が年20万円以下 原則不要 必要(市区町村へ)
医療費控除・住宅ローン控除1年目などで確定申告する する 確定申告で完結(副業分も含めて申告)

所得は「売上」ではなく「売上−経費」です。シェアサロンの利用料、材料費、決済手数料、交通費などは経費になります。売上が30万円でも経費が15万円なら所得は15万円で、20万円以下の側に入ります。経費の範囲は経費にできるもの一覧で確認してください。

注意点:給与を2か所から受けている場合、住民税を「普通徴収(自分で納付)」に切り替えることはできず、本業の給与から合算して徴収されます。一方、シェアサロン利用のように自分の事業として行う場合は、確定申告書で住民税の徴収方法を選べます。

社会保険・雇用保険はどう変わる?

2つ目の仕事が自分の事業(シェアサロン・面貸し等)なら、社会保険は勤務先のものがそのまま続き、新たな加入手続きは発生しません。個人事業の所得に対して健康保険料・厚生年金保険料が追加でかかることもありません(所得税・住民税は課税されます)。

一方、2か所とも雇用で、どちらも社会保険の加入要件を満たす場合は、本人が「二以上事業所勤務届」を事実発生から10日以内に提出し、報酬を合算して保険料を按分します。

雇用保険は原則として主たる賃金を受ける1つの事業所でのみ加入します。複数の勤務先の週の所定労働時間を通算して加入できる「雇用保険マルチジョブホルダー制度」(2022年1月新設)は、65歳以上が対象で、申請できるのは2事業所までです。

将来的に勤務先を辞めて独立する場合は、健康保険を国民健康保険・任意継続・国保組合のどれにするかで負担が変わります。詳しくはフリーランス美容師の保険を参照してください。

よくある失敗と対策

ダブルワークのつまずきは、技術ではなく「段取り」で起きます。独立を検討する人から実際に多く挙がる不安・つまずきを、当社の独自調査から類型化しました。

  • 就業規則を確認せずに始めた。→ 事前に許可・届出の要否を確認します。特に同一エリアでの営業や顧客の引き抜きは、規定がなくてもトラブルになりやすい部分です。既存客への告知は勤務先を辞めるタイミングまで待つのが無難です。
  • 稼働が読めないのに固定費の高い契約をした。→ 最初の3か月は「月に何日入れるか」を実測してから契約内容を見直します。手取りの見通しは手取りシミュレーションで試算できます。
  • 集客を用意せずに場所だけ借りた。→ 副業段階では新規集客に時間を割けません。まずは既存の指名客・知人・SNSからの予約で埋められる範囲から始めます(フリーランスの集客)。
  • 記帳を後回しにした。→ 確定申告直前に1年分の領収書を整理するのは現実的ではありません。売上と経費は発生時に記録します。
  • 体力面を見誤った。→ 勤務日+副業日で休みがゼロになる組み方は続きません。週1日から始めて、収入が積み上がってから比率を移すのが安全です。

ダブルワークで使う場所の選び方

副業として始めるなら「稼働が少なくても成り立つか」「必要な届出が済んでいるか」の2点で選びます。シェアサロンを選んだ理由として当社の独自調査で最も多いのは「自由な働き方ができる」で、勤務日と副業日を自分で組めることが実際の決め手になっています(当社調べ)。

確認すべき項目は次のとおりです。

  • 料金体系(月額固定か、売上に応じた利用料か、その併用か)と、稼働が少ない月の負担
  • 自分の職種で使える設備・スペースがあるか(ヘア・アイ・ネイルで必要な設備は違います)
  • 予約・決済・顧客管理の仕組みが用意されているか
  • 営業時間と、勤務先のシフト外に入れるかどうか
  • 材料の仕入れをどうするか

GO TODAY SHAiRE SALONは全国のシェアサロンで美容師・アイリスト・ネイリストが働ける場所を提供しています。利用できる条件や料金プランは店舗によって異なるため、勤務と並行して使いたい場合は、店舗ページで料金を確認したうえで見学時に相談するのが確実です。

よくある質問

美容師は副業・ダブルワークをしてもいいですか?

法律で禁止されていません。勤務時間外の時間の使い方は基本的に働く人の自由で、厚生労働省のモデル就業規則も勤務時間外の副業を認める内容です。ただし勤務先の就業規則で許可制・届出制になっていることが多いため、事前確認が必要です。

サロンに勤めながらシェアサロンを使えますか?

制度上、勤務しながら自分の事業として場所を借りて施術することは可能です。ただし利用条件は店舗や契約内容によって異なるため、見学やオンライン相談で確認してください。

副業の収入がいくらから確定申告が必要ですか?

給与所得者の場合、給与以外の所得が年20万円を超えると確定申告が必要です。所得は「売上−経費」で計算します。20万円以下でも住民税の申告は必要です。

ダブルワークで社会保険は二重に払うことになりますか?

2つ目が自分の事業(シェアサロン・面貸し等)なら、社会保険は勤務先のもののみで追加負担はありません。2か所とも雇用で加入要件を満たす場合は「二以上事業所勤務届」を提出し、報酬を合算して保険料を按分します。

ネイリストは免許がなくてもダブルワークできますか?

ネイルは美容師法の対象外で、美容師免許も美容所の届出も不要です。そのため3職種のなかで最も始めやすい一方、施術の質を担保する民間資格が実務では重視されます。

ダブルワークは週1日からでも始められますか?

始められます。稼働が少ない前提なら、月額の下限が低い店舗や稼働に応じた料金体系を選び、勤務先のシフト外に予約を入れる形が現実的です。無理のない稼働から始めて、収入の見通しが立ってから比率を移すのが安全です。

まとめ

美容師・ネイリスト・アイリストのダブルワークは法律で禁止されておらず、独立を一発勝負にしないための現実的な移行手段です。押さえるべきは4点です。

  1. 勤務先の就業規則(許可制・届出制、競業避止、顧客の引き抜き)を先に確認する
  2. 2つ目の仕事が「雇用」か「自分の事業」かで、労働時間・社会保険・雇用保険の扱いが変わる
  3. 免許と美容所の届出は職種で違う。シェアサロンなら施設側が届出済みで、自分で開設届を出す必要がない
  4. 所得が年20万円を超えたら確定申告。20万円以下でも住民税の申告は必要

独立を考える人の多くは、まだ勤めている段階から準備を始めています。まずは自分の職種で使える店舗と料金を確認し、稼働できる日数から逆算してみてください。店舗一覧・料金を見るオンライン相談(無料)で相談する

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